3Dレーザースキャナーにより生成される点群データ、その豊富な活用事例をご紹介します!
目次
点群データと聞いてもいまいちピンとこない方も多いと思いますが、点群データは多くの場所で利用されていて、私たちの生活を支える縁の下の力持ちのような役割を果たしています。
今回はそんな点群データの活用事例についてご紹介します。
点群データとは?
点群データは点が群れているという文字のとおり大量の点が集まっているデータのことで、ひとつひとつの点には空間座標(x,y,z)が記録されています。
点群データを取得する時は主に3Dレーザースキャナーが利用されます。3Dレーザースキャナーは毎秒100万本をこえるレーザー光線を照射することで高密度の計測を行うことが可能です。
こうして得られた点群データは表面のわずかなデコボコも記録できる非常に精密なものとなっており、モデリングや災害シミュレーション、危険箇所のモニタリングのための貴重なデータとして役立てられています。
点群データの強みは?
さまざまな活躍をしている点群データですが、いったいどのような強みがあるのでしょうか。
デジタルデータとして取得できるのでICT活用工事に活かせる
国土交通省では工事の効率化やコスト削減のために「ICT活用工事」というものを進めています。ペーパーレス化もその取り組みに含まれており、今までは紙で納品していたデータをデジタルデータで納品できる電子納品の制度などがあります。
電子納品では工事の完成した部分を3Dレーザースキャナーで記録したデータである出来形データの提出が求められますが、こうしたデータを作成する際に点群データが使われています。
用途に合わせたファイル形式で出力できる
3Dを利用するソフトウェアはたくさんありますが、ソフトウェアによって読み込めるファイル形式は変わります。
点群データは空間座標を集めたシンプルなモノなので多くの形式に変換できるという特性があります。このため1つの点群データをCADや3Dモデリング用のデータとして出力が可能となります。
点群データの活用事例
点群データはこのような場所で活躍しています。
土木分野での活用
土木分野は早くから3Dレーザースキャナーと点群データの利用が広まっていた分野の1つです。
地形測量や土量の算出、出来形の測量など多くの作業で活躍していますが、中でも縦横断面図の作成は点群データの特徴を上手く使ったものと言えるでしょう。
断面図とは地形を上から垂直に切ったと仮定して、その時にできる断面を図にしたものです。以前は縦横断面図を作成するために縦方向と横方向の測量をしなければならず、時間とコストがかかっていました。
しかし点群データを利用した方法であれば、工事の際に取得した地形データから断面図を生成することができるため、大きな時間短縮やコストの削減が可能となりました。
リバースエンジニアリングでの活用
設計図のない部品などを3Dレーザースキャナーで読み取り、点群データを取得することでその部品の正確な形状を知ることができます。
データをCADとして出力し、もう手に入らない部品を複製したり、自作アタッチメントを作成して使いやすく改良したりといった活用がされています。
災害対策での活用
地形を定期的に測量することで得られたデータを分析して災害対策に役立てているところもあります。
過去のデータと比較して分析することで、ある地点がどのくらい移動したのかを調べることが可能です。不安定な地形を事前に察知し地すべりのような災害にあらかじめ備えることができます。
自治体が集めた点群データをオープンデータ化
静岡県では工事の際に計測された点群データを「静岡県ポイントクラウドデータベース」というサービスで一般公開しています。
ここでダウンロードできる点群データはクリエイティブ・コモンズ・ライセンスで公開されており、誰でも自由に二次利用が可能です。そのため自動運転システムの開発につかうための地図データとして使われるケースや個人開発のゲームのマップとして利用されるケースなどがあり商用、非商用を問わずに活用されています。
関連リンク:
静岡県ポイントクラウドデータベース
まとめ
今回は点群データについて解説しました。
無数の点が集まった点群データは土木や工業、災害対策などで広く利用されています。点群データはデジタルデータなのでICTとも相性が良く国による積極的な推進もあるなど将来性の高い技術と言えるでしょう。
点群データを分析する技術も発達しており、災害が起きそうな地形を広範囲で観測しわずかな変化を見つけることで災害への備えをしているところもあります。
最近では点群データの解析をしてくれるクラウドサービスも誕生しており、高価なワークステーションを持たない企業でも点群データを活用できるようになる日は近いかもしれません。
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