3Dレーザースキャナーを利用したデジタルアーカイブ化の取り組み(歴史的建造物)第二弾 !
世の中には多くの歴史的建造物や後世に残すべき遺構があります。残念ながら風化や突然の事故、資金不足によって失われてしまうものも数多く存在しており、文化財をどうやって後世に残すかは永遠のテーマと言えるでしょう。
こうした文化財を後世に伝えるための方法の1つに文化財をデジタルデータとして保存するデジタルアーカイブ化の取り組みがあり、近年広がりを見せています。
以前の記事ではデジタルアーカイブについてやノートルダム大聖堂の事例などについてご紹介しましたが、今回は前回紹介できなかった事例についてご紹介したいと思います。
デジタルアーカイブの活用事例
徳島県鳴門市「増田建築」のデジタルアーカイブ化
日本のモダニズム建築を代表する建築家の一人に増田友也という人物がいることをご存知でしょうか。国立代々木競技場を手掛けた丹下健三氏と並び称され「東の丹下、西の増田」と言われるほどで、その増田氏が手がけた建物は「増田建築」とも呼ばれます。
徳島県鳴門市にはそんな増田建築が数多く残されていますが、老朽化や耐震化不足、財政上の都合などによって維持が難しくなり多くの建物が取り壊されることとなりました。
鳴門市を代表する建築と市民の思い出ををどうにかして後世に残したいということで現在デジタルアーカイブの試みがなされています。
デジタルアーカイブの方法にはデジタルカメラで写真をとる、360度カメラを使ってVR化などいくつかの方法がありますが、3Dレーザースキャナーを使った保存もその1つです。
東日本大震災の震災遺構をデジタルアーカイブ化
東日本大震災から10年がたち被災地の復興も徐々に進んでいます。復興工事が進むと同時に震災の遺構が消えていく中、遺構をデジタルアーカイブ化することで今後の研究や防災教育に役立てようとする動きがあります。
広範囲に及ぶ震災遺構をデジタルアーカイブ化するために地上設置型レーザースキャナー、車載型のMMS、ドローンなどを多種多様なスキャナーを使って被災地の状況の詳細な記録が行われました。
こうして保存されたデータは最新のMR技術を使ったシステムによるバーチャル体験などの方法で活用されています。
マチュピチュ遺跡を3Dモデル化
2012年に国立科学博物館で『インカ帝国展 マチュピチュ「発見」100年』という企画が開催されました。
会場ではマチュピチュ遺跡を再現したVR作品が展示されたのですが、このVR作品に使われたデータは本物のマチュピチュ遺跡を3Dスキャンした点群データがもとになっています。
このデータを作成するためにTBSテレビなどが実際にマチュピチュ遺跡へ行き3Dレーザースキャナーを使ってマチュピチュ遺跡を完全にスキャンしました。
約13平方キロメートルという広大な遺跡を日本にいながら体験できるのはVRならではと言えるでしょう。
まとめ
さまざまな事情から維持することが難しくなってしまう文化財が数多く存在します。
こうした中どうやって価値あるものを後世に伝えていくかを考える活動が全国各地で行われており、歴史的建造物のような形のある文化財であれば3Dレーザースキャナーによるスキャンやデジタルカメラを使ったフォトグラメトリ、踊りのような無形文化財であればモーションキャプチャーを使った計測といった方法を利用して文化財のデジタルアーカイブ化が進められています。